Native Insturments社のKOMPLETE KONTROL A61というMIDIキーボードを導入した。使い勝手をレビューする。
導入のきっかけはふたつある。ひとつは2023年4月に参加した鍵盤ジェダイズライヴ。メンバー(ジェダイだから評議員)の髙橋ごんがRolandの同様のコントローラーでMac OS上のヴァーチャルアナログシンセ音源を鳴らしているのを目の前で見たこと。筐体は軽いしライヴでも使える安定性はあるしで、これは「新しいシンセサイザー」として無視できないと直感したから。もうひとつは2010年以来使い続けているYAMAHA S90XSのウェイテッド鍵盤が、入院後の演奏能力減退に伴い少々重荷に感じられるようになったこと。いくつかの鍵盤にアクション不良があることも気になる。
こういうの。
手前のMac BookにArturiaのV collection(かな?)がインストールされてて、
基本アープ オデッセイのエミュレーションでベースサウンドを鳴らしていた。
Super Goooooood!
例によって東北地方で最も展示楽器が多い楽器店(推測)島村楽器仙台ロフト店に赴き、いくつかの現行デジタルシンセやMIDI鍵盤コントローラーを試奏して選んだ。不見転よりも実店舗での購入を推奨する私。コンサルティングとサポートは必要だと思う。知識もあり接客も上々のデジタル楽器担当者が常駐しているとなれば、なぜそこに行かない?の心境である。今のところセミウェイテッド鍵盤に限るとClavia社かNI社が一番バランスが良い。KOMPLETE KONTROL(以下KK)は始めて触ったが、個人的にはダントツで弾き心地が良かった。YAMAHA 旧DX7の鍵盤アクションに一番近い。あの鍵盤は傑作だと思う。オルガンやストリングス、パッド系音色の入力は、私はやはりセミウェイテッドの方が楽だ。「ちゃんと重い」ウェイテッド鍵盤で弾くのとでは結果的に演奏内容が違ってくる。鍵盤だけでなくふたつのホイールコントローラーの抵抗感も上々。今後Apple Mac BookProにインストールしたソフトウェア音源と組み合わせてライヴ会場にも持ち込みたいと考えている。楽しみだ。
以下実機を触ってのインプレッション。そんなわけで鍵盤アクションについては納得済み。実際試行錯誤の多いDAWへのMIDIデータ打ち込みには61鍵盤で充分だと感じる。オクターヴ切り替え機能もあるからなおさら。むしろちょっと意外なほど硬かったのはスイッチ類。動作音そのものは「カチッ」という乾いた軽い音なのだが、クリックの抵抗が音に似合わず硬い。こういう部分はドイツブランドだなぁと思う。本体が軽くて良い。4.7kg。USBバスパワー駆動なので大嫌いなACアダプターも必要ない。ペダルコントローラー入力はひとつしかないが、サスティンペダルが機能すればほぼ事足りるので致命的ではない。
NI社はソフトウェア音源もハードウェアコントローラーも多数リリースしており、代表的なのはソフトウェアサンプラーのKONTAKTだが、それらNIソフトウェアとの親和性は当然のことながら高い。ブラウザモードに入り大きめのダイヤルで次々パッチを切り替えられるのは素晴らしい。コンピュータのキーボードを経由せず目の前のコントローラーの盤面だけに集中してパッチ選びや演奏ができるのは、実現されてみればかくあれかしという理想の状態である。一方でそのセッティングのための設定アプリが複数必要になり、NI素人にはどれがどういう役割を果たすのか直感では分かり難くもあった。必須のアプリ(フリーウェア)はKKそのもののセッティングとNIソフトウェア音源を橋渡しする「KOMPLETE KONTROL」、ファームウェアアップデートのための「Device Updater」、NI製ソフトウェア音源を一括管理する「NATIVE ACCESS」である。
バンドル音源が多いのも魅力ではある。前述のKONTAKTは使ってみればなるほど使い手があるプレイバックサンプラーだ。次々と音源パッケージを買いたくなるのも頷ける。前述したNATIVE ACCESS.appは「いや、バンドル音源なんざ使いません!」という生き方なら必要ないのだが、そんな選択肢はない。
DAW(曉スタジオの場合はApple Logic ProX)との親和性もよく考えられているが、「いつも良く使う機能」があまり集約できない私の場合、万能の孫の手を手に入れたが痒いところがあまりないという贅沢な状態と言える。キーボードショートカットをそれなりに編集して使用してきた経緯もあり、Mac側キーボードによるショートカットコントロールの方がストレスがない。まぁこれは今後変化していく可能性はある。
実はAシリーズの大きな特徴である8つのアサイナブルコントロールノブをほとんど使いこなしていない。MIDIコントロールメッセージをカスタマイズでき、マウスやトラックパッドに触ることなくソフトウェア音源の操作子を直接調節できる……はずなのだが、NI製以外の音源でうまく作動しない。DAWでも使えるはずだがどうもうまくいかない。トランスポートなど専用のスイッチがある機能はもちろん動作するのだが、PreSonus Federportを導入している当スタジオでは重複する機能だし、前述のとおりカスタマイズしたキーボードショートカット以上に超絶便利かと考えると、必ずしもそうとも限らない。
棚からボタモチ的にMac用キーボードとトラックボールを
最下段・最手前に配置することが叶った。
長時間のDAW作業ではこれもとても大事
ということでMIDI知識の浅い私が100%使いこなしているとは言えないが、据置環境での導入当初の目的はほぼ達成したと言える。早くライヴの現場に持ち込んでみたい。購入金額はNIオンラインストアと同額の32,800円。支払いと発注を経て納品まで3日かかった。