dj korterと8年ぶりにインプロビゼーションセッションを行った、という話を前回書いた。
このセッションに至るまでに服部の頭の中にはいくつかの企みがあった。ひとつは服部と作曲家鈴木雅光が進めていたアンビエントミュージックのレコーディング作品。雅光は作曲家であると同時に頼れる音楽専門家であり私の小学生以来の友人でもある。アイデアの交換を経て録音を始めてみたのだが、頭でっかちになってしまい足踏みが続いているので、制作のカンフル剤として、ぜひkorterに加わってほしかった。korterの出す音を聴いてもらうのが一番早い。このセッションの現場には雅光にも来てもらっていたのだ。
もうひとつは実演のアイデア。korterと服部がホストバンドを務め、様々なパフォーマーを迎えるインプロビゼーションセッションはどうだろう。korterと服部というそもそも異文化すぎる組み合わせなら、もうどんな表現者でも受け入れられるだろう。ミュージシャンでもいい。絵描きでもいい。ダンサーでもいい。役者でもいい。もう誰でもいい。我々の出す音に反応して何かを表現してくれる人なら誰でもいいのだ。ホストバンドとして機能するかどうかの、このセッションはチェックの意味も兼ねていた。
雅光の話をすると、korterもある人を呼びたいという。それはフィールドレコーダーとして活躍する菅原宏之だった。訊けばセッション現場にほど近い建物にオフィスを構えているという。2019年夏に開催されたあるイベントで、私は菅原と会っている。名刺代わりにと頂戴したCD「Northern Latitude 38° Line」が滅法良かった。商業音源制作もこなす自然音のコンシェルジュの耳と手法がこのプロジェクトに加わってくれれば、より複雑な化学反応が期待できる。否も応もない。
そんな経緯で4名が集まった。「とにかく呼ばれたから来たよ」という雅光と菅原を聴衆に、おおよそ15分のインプロビゼーションセッションをkorterと服部で2回。どちらも手応えがあった。現場は音楽練習用のスタジオではなかったので、周囲の音が我々の音に唐突に割り込んでくる。それもまた快感だった。
音出しの合間に4名で自己紹介と雑談。今日はふたりでやってみるけど、もし気に入ったら4名でやりませんか?2+2、セッション音源の再編集などなど、さまざまな手法で多彩な音を出せる。全員快諾。4名で「音で遊ぶ」プロジェクトが立ち上がることになった。しかもこのインプロビゼーションセッションは月例化。誰がどんなアプローチをしてくれるのか楽しみで仕方がない。
(文中敬称略)