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Live・Place to be 3rd.が終了

滅多に無い体験

· ライヴ

2017年6月18日、カフェ・コロポックルでのライヴが無事に終了した。山本直子さんお声掛けによるこの「Place to be」シリーズには初参加だったが、素晴らしいメンバーのミュージシャンシップによってとても楽しく、またチャレンジングなステージになった。

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この「居場所」とも訳せるコンサートシリーズ、ミュージシャン主体の企画というのが嬉しい。いつもはスタンダードを中心にしたゴリゴリのジャズを演奏されているそうだ。今回は服部がメンバーにいることで(当初は直子さんと服部のデュオの予定だった)、ぐぐぐっとコンテンポラリーミュージックに寄った選曲になった。音楽を成り立たせる上で、ふたりの鍵盤奏者の橋渡しをしてくれたのがドラマーの行方基朗さんで、さらに色付けをくっきりしてくれたのがヴォーカルの佐々木親也さんというふたりのゲストミュージシャンだった。

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直子さんとふたりでのリハが1回、行方さんを交えてのリハが2回、佐々木さんとは当日初めて音を合わせるという塩梅だったが、このメンバーでならむしろ「破格にリハ回数が多い」と言える。佐々木さんはいつもどのようにしているかわからないが、直子さんや行方さんのようなジャズ畑のミュージシャンなら当日開場1時間前に要所要所だけを確認してリハおしまい…なんてケースはざら。もちろん服部はそういう現場は数えるほどしか経験していないので、今回のように3回もリハーサルがあって嬉しかった。特に今回の演奏内容はシンセサイザーと鍵盤ハーモニカが50/50だったので、シンセの音色などもそれなりに準備する必要がある。音色の準備とは音色作りであり、同時に演奏内容(具体的にどういうフレーズを弾くか)の吟味とイコールである。さすがにそういうのは当日リハでは難しい。

演奏曲目
-1st stage-
1.Rainbow Seaker(J.Sample)
2.Libertango(A.Piasola)
3.Rainy Jorney(N.Yamamoto)
4.in a sentimental mood(D.Ellington)・鍵盤ハーモニカソロ
5.Overjoed(S.Wonder)
6.Chan's Song(H.Huncock)
7.Heart Beat(N.Yamamoto) with Akira Yamamoto

-2nd stage-
1.My Favorite Things(R.Rodgers)・ピアノソロ
2.琥珀(A.Hattori)
3.Picture of Sky(N.Yamamoto)
4.Human Nature(M.Jackson)
5.Maiysha (So Long)(M.Davis&R.Glasper)
6.Spain(C.Corea)

encore1
Don't You Worry 'bout a Thing(S.Wonder)

encore2
What's Goin' on(M.Gaye)

見てお分かりのとおり、各曲ジャンルの跳躍がすごい。しかし変わった楽器編成によるカバーで聴くにはこれくらいヴァラエティに富んでいる方が楽しいと思う。お客様は実にジェントルな態度を終始崩さず、演奏中は身じろぎもせず…な感じだったが、その分曲が終わった時の拍手の大きさできちんと反応を返してくださった。

by Koki Goto

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特に服部のソロタイム、「in a sentimental mood」を演奏した時、演奏するこっちはいつものクセで目を閉じて演奏してしまうのだが、だからと言って無人の部屋で演奏している感覚などまったく無く、むしろ目を閉じているからこそ会場の「気」みたいなものを全身で感じてしまった。あれはすごい。自分の周りの空気の密度が急に濃くなって壁のように立ちはだかる感じ。もっともそれは苦痛ではなく、むしろ鍵盤ハーモニカという音量的には非常に脆弱な楽器で、その「気」と渡り合う快感みたいなものを感じることができた。

ごく最近完成した新曲「琥珀」も、いろいろな方が「よかったよ」と声をかけてくださった。今回のステージでお披露目できて私もとても嬉しい。

by Koki Goto

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直子さんのピアノは一言で言うと硬質。ご本人の見た目は「たおやか」だがタイム感はソリッド、音数にも気を配っておられる様子がよくわかる。今の服部のプレイとはある意味反対方向のベクトルなので、同じ鍵盤奏者同士でもステージ上で居心地が良かったのはそのせいだと思われる。直子さんがどう思ったかは謎だが(笑)。

行方さんのプレイは前述したとおり、そういう離れた指向性を持つ鍵盤奏者の間に居て、ちょうどアンカーのような役目を果たしてくれていたと思う。同時にダイナミクスもタイムの駆け引きもたっぷり作ってくれる。極端な言い方をすると管楽器のようにドラムを叩くのだ。意味がわからない?機会を作って行方君のプレイを聴いてみてほしい。もしあなたがミュージシャンなら、一度演奏してみたくなるはずだ。

佐々木さんのヴォーカルは、こんなヒトクセもフタクセもあるメンバーの中で、むしろ透明になることで逆に存在感が出ていた。極端な話、この三人に「オレとバックバンド」みたいなヴォーカリストがライヴ途中でステージに出てきたら、かなりくどかったろう。佐々木さんは実はギターも演奏する方らしく、楽器演奏者の耳でその場の音楽を咀嚼して声と言葉を通してくる。空手ではなく合気道とでも言えば良いのか…。50/50のパワーバランスでヴォーカルナンバーを演奏できることは稀だ。貴重な体験だった。

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L to R 山本直子、服部暁典、行方基朗、佐々木親也

今回のようなライヴを体験すると、もっともっと…と求めてしまう。だがこのメンバーが簡単に集まれるわけでもない。次の機会を楽しみに待ちたい。ミュージシャン諸氏、ご来場のお客様、コロポックルのマスターご夫妻をはじめスタッフとして働いてくださったホスピタリティ溢れる皆様に感謝申し上げます。アーティスト写真撮影と今回のライヴの写真を提供してくれた友人後藤浩輝君にも感謝。どうもありがとうございました。

by Koki Goto

by Koki Goto

by Koki Goto

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