ヘッドフォンを購入した。メインのものへのオルタナティブ、すなわち予備機として購入してみた。ブツはSOUND WARRIORというブランドのSW-HP10sである。
ヘッドフォンはもう20年以上SONYのものを使っている。真剣にミックスダウンをやるようになってからはMDR-7506が長らく相棒だ。これは民生ラインの品物なのだろうか。MDR-CD900STを現場で使ってみたことはあるが、自分とはひたすら相性が悪かった。確かにミックスの粗を探すための顕微鏡のごとき威力はあるが、反対に全体像を掴むことが難しい。とても自宅に導入する気になれなかった。7506は米国向け製品として、向こうのPA/SR屋さんが常用していると訊いてはいたのだが、実際にコントロールルームで使ってみると音楽の全体像はきらびやかに聴こえて、細部もそこそこの解像度があるように思えた。いわゆるモニターヘッドフォンとしては首をかしげる音質だが、たまたま私の使うモニタースピーカーYAMAHA NS-10Mとの相性が良かった。我がスタジオのテンモニは内部配線をすべてPCOCCに交換しており、やたらハイ抜けが良い。7506でチェックして耳から外してテンモニの音を聴いても、印象の上ではまったく同じに聴こえるという奇跡のマッチングに慣れてしまうとなかなか手放せるものではない。ところがこいつらは低音域のチェックは苦手で、たいていは低音過剰なミックスができあがる。その問題の解決のためにはモニタースピーカーもヘッドフォンも「異なる鳴り方」の製品が必要だったわけだ。
SW-HP10sを購入してみたのは、たまたまFACEBOOKで友人が紹介していたからなのだが、琴線に触れるものがあり購入してみた次第。
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「城下工業SW-HP10sを音声レコーディングで使ってみた」
城下工業の公式サイト自体は垢抜けない印象ではあるが(笑)、その製品はなかなかグッと来るものが多い。開封してまずはiPhoneにつなぎサウンドチェック用のプレイリストの曲を次々再生してみる。第一印象は「地味」。ぜんぜん気分が高揚する音ではない。がっかりだ。だが全帯域をフラットに鳴らす製品(ヘッドフォンに限らず)は地味な音質のものが多い。逆に言うと今どきのぎらぎらした音は中域・中低域が凹んでいる「ドンシャリ」な音質であることがほとんどで、かなり作為的に作られた音質だと言える。それを一聴して聞き分けられるということは、このヘッドフォン、けっこうイイのでは…??
そのままスタジオに持ち込んで使ってみた。その時はひたすらコーラスのダビング中だったので密閉型のSW-HP10sはものすごく都合がいい。ひとり多重コーラスは何度も何度も同じラインを歌い続けるので、1トラック中のヘッドフォンからのカブリ(音漏れ)が例えわずかであっても、全部のフェーダーを立ち上げると意外にカブリが大きめに収録されてしまうことが多い。特にMDR-7506は半密閉型なのでどうしてもその傾向がある。
密閉型ヘッドフォンを使うこと自体が稀なので、自分の声を聴きたくてどんどんモニター音量が上がってしまい、結果的にこの日録ったヴォーカルの一部はピッチが高くて没になった(笑)。翌日に改めてミックスチェックのために聴いてみたところ、再生帯域にクセはなく、また7506と同等かもうちょっと上等な解像度を持っていることもわかった。まぁ上を見ていけばキリのない世界だが、改造テンモニや7506のオルタナティブは立派に果たせると確信した。良い買い物だった。
城下工業 Sound Warrior SW-HP10s 14,300円(税込)
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