サイトへ戻る

Keyboard Workshop#1 at DIMPLES

フェンダーローヅピアノやロータリースピーカーの実物を味わい学ぶワークショップのレポート

· 音楽雑感

仙台市青葉区木町通りにライヴハウス「DIMPLES」さんがある。極上コンディションのフェンダーローヅピアノとロータリースピーカーが現役で稼働している希有なライヴハウスである。今となっては珍しいこのふたつのヴィンテージレジェンド楽器を生かした鍵盤奏者のためのワークショップが開催され、服部はアドバイザーとしてお声がけいただき参加した。詳細をレポートする。

Keyboard Workshop
2023年11月10日(金)19:30-21:30
Live Music Cafe Dimples
参加料2,500円(Drink,Food別)

broken image

上掲フライヤーに書かれているように、このワークショップはシンセサイザーのプログラムでしかローヅやオルガンを知らない鍵盤奏者に、オリジナルが如何に表現力豊かな楽器であるかを体験してもらうことが趣旨である。そのためには楽器の来歴のレクチャーや、自身の演奏時の具体的な奏法やアプローチのヒントのアドバイスも盛り込んだ。私は今回の件で初めてDIMPLESさんに足を踏み入れたのだが、ローヅピアノにせよロータリースピーカーにせよ、そのコンディションに大感激した。聞けば店長横松直人さんはヴィンテージフェンダーギターアンプマニアで、いきおい電気回路を含めたリペア、メインテナンスに精通することになったらしい。その延長でローヅやロータリーのコンディションも保たれているのだ。ローヅはMk2あるいはMk3。大幅に改造されたものをさらにリペアした個体であることと、私自身がローヅピアノにあまり詳しくないのでモデルを特定できず(マニアの方々、申し訳ない)。ただ由来ははっきりしていて、某有名国内バンドの鍵盤奏者だった方の遺品である。一方のロータリースピーカー、由来は詳しく伺っていないが、実際に音を出すと由来やメカニズムなんかどうでも良くなってしまう。ドライブするのはHAMMOND XK-1c。物理ドローバーがちゃんと装備されているので、少なくともバンドアンサンブルの中のオルガンパートを担う分には最低限のことはできる。

broken image

ワークショップのメニューは大きく分けて3つのパートに分かれている。趣旨説明や各楽器・機材のレクチャー、ホストバンドによるデモ演奏。そして参加者ひとりひとりが10分の持ち時間で好きなように楽器に触れる時間。締めのデモ演奏が終わると、参加者入り乱れての大セッションタイムという三部構成。ホストバンドはこのワークショップの企画者でもある山本直子さんと宍戸直子さんにドラマー山崎楽さんに加わってもらった。お三方ともDIMPLES常連、関係者という方々である。デモ演奏では如何にもローズならでは、オルガンならではという曲をピックアップして、どちらも服部が担当。特に締めの深紫バンドの湖上の煙りでは、私、大音量で好き勝手弾かせていただき、久しぶりにグリッサンド大会になったので右手指がボロボロになってしまった。でもフルドローバーにオーバードライブ+ロータリースピーカーで弾くジョン・ロード大先生のマネっこは、問答無用でテンション爆上がり。シアワセ。

broken image

参加人数上限は10名前後とし、老若男女9名(内見学者1名)から申し込みがあった。それでも実際に楽器に触る時間として10分を用意するとなれば、それだけで80分になってしまう。ひとり10分が十全とは思わないが、その時間で納得できなかったとしても、最後のセッションタイムで実演の中で様々にヒントを掴めたことと思う。意外だったのはご自分の順番が来るとまずローヅに向かう参加者がほとんどだったこと。オルガンって若い人には本当に未知の楽器なのだなぁと改めて思った。普段演奏する音楽によってはオルガンサウンドは縁遠いものなのかもしれない。増してや音色作りの方法がまったくわからないとなれば、触る気も起こらないのは自然の成り行きか……。ドローバーの仕組みや歴史的背景を説明すると初めておそるおそる音を出してくれるようになったが、じゃあどんなフレーズを弾けば良いのか、という次の関門がある。

broken image
broken image

一方で10名弱しかいない参加者が、鍵盤奏者として文字通り十人十色だったことは素晴らしい。もちろんキャリアも違う。普段の自分の演奏にこういう楽器をどう導入すれば良いか悩んでいる人もいるし、すでにローヅの実機を購入済、Tipsが知りたいなんて剛の者もいる。クラシックのレッスンは充分積んでいるがバンド演奏の中でどう応用すれば良いか試行錯誤している人もいる。そういう人たちがひとつの会場で楽器へのアプローチを披露しあうのだから、それだけでも相当な情報交換になる。そもそも鍵盤奏者には鍵盤奏者の友達が少ないものだ。鍵盤楽器奏者の交流機会という意味でも、このワークショップは有益だった。

broken image

いやらしくも鍵盤ハーモニカを秘かに持ち込み、セッションタイムには遊んでいただいた

初めは緊張していたであろう参加者が、最後のセッションタイムには良い笑顔になり、弾くのも聴くのも楽しいという雰囲気になったのはとても嬉しい。ワークショップの内容そのものはさらにブラッシュアップして回数を重ねていきたい。直子さんと楽さんはセッションタイムを含めて演奏しっぱなしでお疲れさまでした。素子さんは当日体調不良で欠席せざるを得なかった横松店長に代わって、PAからキッチンから記録撮影から湖上の煙りのヴォーカルまで(!)大活躍。本当にありがとうございました。何よりも勇気を出して参加してくれたみなさん、本当にありがとうございました。願わくば講師と参加者ではなく、ミュージシャンシップに則ってこれから末長くお付き合いいただければこれほど嬉しいことはありません。またどこかのステージでお会いしましょう。