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必要な力/不必要な力

やっぱりやってみないとわからないことはあるもので…

· ライヴ,機材

及川文和(ドラム)と田村滋(ベース)を迎えた服部暁典トリオ、2回目の演奏が終った。

あなたとNorahと音楽と#3

2018年4月7日(土)17:00 -

門前喫茶Norah

ミュージックチャージ500円+ワンドリンクオーダー

セットリスト

1.Speak,Easy,This…

2.Overjoyed

3.Fall,Rain Fall

4.Vent et Soleil

5.ふわり(incl.朧月夜)-Pf Solo

6.琥珀

7.Feel Like Maikin'Love

8.Don't You Worry 'bout a Thing

2.8.Stevie Wonder

5.水沼慎一郎、岡野貞一

上記以外 服部暁典

1.Speak,Easy,This…

1990年代の終わり頃に、第三者との演奏を前提とせずに多重録音で仕上げた曲。A-B-Aの単純なテーマ。演奏者と聴衆の耳馴らしに…。『典楽(2001)』収録

2.Overjoyed

スティーヴィー・ワンダーという作家とその作品は、一生をかけて勉強しても良いと思っているのだが、そう思うきっかけがこの曲。「音楽の魔法」を体現した作品を彼は多く作っているが、この曲などその典型ではないか。『in Square Circle(1985)』収録。

3.Fall,Rain Fall

それなりに大事に作った曲だが、作曲した本人はなんとなく存在を忘れていた。ベーシスト齋藤弘介君が気に入ってくれて、彼とのバンドで演奏する機会があり、作家本人が見直したという不幸な来歴を持つ曲(笑)。リハーサルでは及川が「これ、なんとなく知ってるなぁ」。レコーディングでドラムを叩いたのはあんただよ!『La Passione(2011)』収録。

4.Vent et Soleil

渋谷裕子(ダンス)、齋藤寛(パーカッション)、佐藤弘基(ベース)とパフォーマンスする機会がかつてあった。その時にバンド側の自己紹介的に作った曲なのだが、ハーモニーの進行は実はほぼひとつだけ、その上でメロディをどう展開できるか?というお題を自分に課した曲でもあった。早めのラテン系となると、及川のドラムは本気で気持ち良い。

5.ふわり(incl.朧月夜)-Pf Solo

敢えてピアノソロで1曲。水沼の「ふわり」も多分一生弾いていくと思う。音数の少ない美しい曲だが、その分演奏には神経を使わざるを得ない。そして朧月夜。Norahでライヴ演奏をする理由が私には確かにあって(後述する)、その大きな動機として、Norahが立地する定義山地元の方々に聴いていただきたいという思いがある。普段生演奏を聴くことすら少ないという方々に興味を持ってもらいたく、誰もが良く知る曲を取り上げたのだが、もちろん「朧月夜」という曲そのものも「ふわり」と同じ観点から大好きであり、演奏が難しい曲だ。『ふわり(2011)』収録。

6.琥珀

自分が楽器を演奏するようになって45年くらい経っている。こんなに長い時間音楽と関わっているのに、会心の演奏など記憶に無く、試行錯誤と後悔ばかりが堆積している。そんな私の作品や演奏にも、「良かった」と言ってくださる聴衆がいる。やってきたことに意味はあったんだなぁと時々ぼんやりと思う。試行錯誤がそれなりに音として結実しているのだと思いたい。琥珀という宝石は、地中に埋もれた樹木から染み出た樹液が、気の遠くなるような年月をかけて圧縮されでき上がる。自分の演奏を琥珀と呼ぶなどおこがましいが、長い時間かけて到達できた場所にいることには間違いない。願わくば自分の届ける音が、誰かにとって有益なものであってほしい。滋君のベースソロは前回と打って変わって饒舌になっていた。

7.Feel Like Maikin'Love

どういうわけか今回のセットリストは自作曲が多くなってしまった。ちょっと趣向を変える意味でスタンダード曲も演奏した。ロバータ・フラックの大ヒット曲だと言うが、自分にとっては鍵盤奏者として武者修行していた頃に出会った定番曲のイメージ。大好きな曲だがアドリブソロを展開するのは難しい。同名シングル曲(1974)。

8.Don't You Worry 'bout a Thing

Jacob Collierという若者が居る。歌を歌い様々な楽器をこなす…というとプリンスを思い浮かべるが、こちらはヴォーカルハーモナイザーによるリアル多重コーラスや、様々な生楽器のルーピングが主体のモダン多重録音の作家である。ライヴ映像を観たらスタジオでのレコーディングそのままのようなステージングで、とにかく大ショックを受けると共に中毒のようになってしまった。そんな彼がライヴでこの曲の超絶楽しいカバーを披露していた。オリジナルに沿ったカバーももちろん何度も演奏したけれど、今回はジェイコブを見習ってできる限り破天荒になるよう心掛けた。オリジナルはスティーヴィーの『Inner Visions(1973)』収録。

選曲に偏りはあったものの、ピアノソロで朧月夜を演奏できたことは幸いだった。会場である門前喫茶Norahはすっかり人気店になってしまったが、地元に何かを還元できるお店になりたいというご主人夫妻の考えは揺らいでいない。かつて軽い気持ちで「こんなにいい空間なんだから何か演奏させてくださいよ」とお願いというか、提案したことがある。地元でお商売をしている人たちが、仕事が終ったあとリラックスできるなにかを提供したい、というご主人夫妻の思いをその時に聞き、徹頭徹尾共感したことがこのライヴシリーズの発端だ。ミュージシャンとして挑戦的なこと(選曲だったり演奏だったり)をしたいという欲求もあるが、普段音楽に接することが少ない人でも楽しんでもらえるプログラムを提供したい。それはそれで充分にチャレンジングである。Norahご夫妻にも私にも、この空間で音楽を提供する強い動機があるのだ。Norahでのライヴはこれからもいろいろなミュージシャンを巻き込んで続けていきたいと思っている。

さて一転して演奏側の話。今回のライヴ準備は個人的にはけっこうバタバタだった。身辺がとても忙しい時期だったのだ。もちろん及川・田村両名もそうだったろう。セットリストはギリギリに決めたので自分の演奏アプローチをどうするかということも、アタフタと決まっていった。そんな中で本番を迎えたわけだが、終った今だからわかるのだが、どうもちょっと力んでいたようだ。

というのも以前からこのブログに書いてきたように、自分にとってピアノトリオとピアノソロは大き過ぎるチャレンジであり、「如何にショボくない演奏」にできるか?というプレッシャーとの戦いであり、「ショボいと思われたくない!」という虚飾の心である。その結果余計な音を出してしまったり、声高になってしまう。本当は最低限の音数と音量でやりたい。理想はパッと聴き「なんだ、大したことやってるわけじゃないじゃん」と思わせつつ、録音を聴き直すと「んー、なんだー、実は意外と…」ともう一回聴きたくなるような演奏だ。

おそらく自分が感じるプレッシャーに対して、私は過剰に反応してしまうのだ。きっと及川・田村の両名も服部のそんな演奏に反応してしまう局面があったと思う。本当はゆっくりと、歌うように、最低限の音数と音量で演奏したい。ミニマムな演奏をするには力は不必要ということではない。ここまでは必要な力、これ以上は不必要な力(つまり力み)という分水嶺を、見極めつつ演奏できなければならないのだ。

上段:Roland JP-8000

下段:YAMAHA S90XS

実は演奏側のモニターという技術的な問題も無関係ではないが、この力む/力まないの分水嶺を見極めるための修業はまだまだ続くだろう。

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