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裏の裏は表

色付けの少ないコンプレッサーとイコライザーを買ってはみたが…

· 機材

Metric Halo社のプラグインChannel Strip3を導入してみた。その操作性、かかり具合、音質などなど大勝利である。しかし導入理由を考えると、「裏の裏は表」のような、「一周して元に戻った」的な行為であることも否定できない。

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アナログ回路による脚色が録音やミックスに吉と出るか凶と出るか。本物の物理ミキサーに向かっている頃はそんなこと考えなかった。録った音をデジタルドメインだけで処理するようになって、はじめて「アナログ回路の脚色」という概念が生まれたと言ってもいい。回路の特製をエミュレートするというヤツだ。特にDAW同梱のプラグインだけではどうにも無表情というか、味わいが足りぬと感じられるものの筆頭がコンプレッサーではないか。私の場合はその次がEQであった。

で、お金を払ってwaves社のSSL 4000 Collection導入した。コンプとEQとチャンネルストリップが2種類である。これがものすごく重宝した。SSLのチャンネルストリップに慣れていたというのもあるが、まさにかゆいところに手が届くチャンネルストリップなのだった。

調子にのって様々なチャンネルにそのSSLプラグインをインサートしていくうちに、これはこれで脚色過多ではないのか?と思えてもくる。信号の本質は極力変質させることなく、コンプにしてもEQにしても、さりげなく、しかし狙ったところにだけズバッと効くものはないのか…。そう考えた時に私の脳裏に反射的に浮かんでくるのはSONNOX Oxfordの一連のプラグインである。実際及川のスタジオでOxford EQを使ってみたことはあったが、モニター環境が普段と異なることもあり真価を実感できなかった感がある。もうひとつは実は身近にあって、暁スタジオのメインオーディオインタフェイスMetric Halo mobile I/O 2882に同梱のプラグインである。2882のコンソールソフトウェアには簡易な録音用機能も盛り込まれているのだが、そもそもインターフェイスで変換直後のデジタル信号をピュアに記録する方向=レコーダーとして設計されており、DAWのような編集機能は無い。にも関わらず、このMIO Consoleに同梱されているプラグインは素晴らしい。コンプの音色変化は本当に最小限(というか気付かない)だし、パラメトリックEQは本当に狙った周波数だけが狙ったベル角度で調整できる印象がある。良いことずくめなのだが、MIO Console上でしか使用できず、DAW上では直接インサートできない(一手間かければできるが…)。「DAWに直接挿すなら製品版を買ってね」ということであろう。そこで暁スタジオではSSLのオルタナティブとしてMetric Halo Channel Strip 3を導入してみたわけだ。

実際ドラム(プラグイン音源addictive drums2)のトータルにかけてみたのだが、SSL E/Gに慣れているからこそこの無色透明な感じがありがたい。特にEQはブーストするよりもカットする方向で使うと本当に魅力的だ。そういえばアイソレーターなんてEQもどきがあったなぁと思い出した。そもそも音響機材は全般的に「色付け(脚色)のない機材こそ最良」という世界である。それがデジタルの世界だけで作業するようになったら今度はアナログエミュレートに精出し。それに慣れてきたらやっぱり無色透明のプラグインが欲しくなるとは…。裏の裏は表なのだ。

Metric Halo Channel Strip3は11月のブラックフライデーセールで$29で購入。仕方なくこれを機にiLok3(¥6,264)も購入した。iLokを導入したことでこれまで購入を躊躇していたSONNOXも買えるようになったのだが…。プラグインプログラムは、この「手軽に買えてしまうところ」が恐ろしい。