私こと服部暁典が、ミュージシャンとして当面の目標としてきたことがある。どちらもライヴステージのことだが、ひとつは「ピアノトリオ」、もうひとつは「ピアノソロ」。
この目標をいつごろ決めたのかもう思い出せないが、もう10年くらい前のような気がする。その頃は自らのリーダートリオは遠い向こうにあるように思っていたし、増してやピアノソロでステージに立つなど、まったく恐れ多いことだった。幸いに機会を得て、トリオもピアノソロも経験はした。それでも自身のオーガナイズでのトリオライヴは私にとって今も特別な意味を持っている。そんな服部のトリオライヴが実現することになった。
あなたとNorahと音楽と#2
2017年12月2日 17:00開演
門前喫茶Norah
仙台市青葉区定義
ライヴチャージ500円+ワンドリンクオーダー
出演
及川文和(Drums)
田村滋(Bass)
服部暁典(Keyboards)
紅葉も終わった初冬の定義山で温かい飲み物とライヴ演奏を楽しんでください、というコンセプトなのだが、ずばり鍵盤トリオでの出演と相成った。かの矢野顕子大先生は「(バンドは)トリオが一番かっこいい」という旨の発言をされている。著名ジャズピアニストの冠トリオは数知れず。スリーピースロックバンドも数知れず。そのことに何の異論もないのが、私の音楽的ルーツはYMOでありジャパニーズフュージョンであるから、要は何かと賑やかなバンド編成で演奏するという思い込みが根っこの部分にある。加えてトリオという最小限編成のバンドでの演奏は、音楽に占めるメンバーの関わり代が大きくなる。自分にとって「トリオ」が特別な意味を持つのは、そういうルーツや責任範囲の大きさゆえのことかもしれない。だからこそ、かつては目標に据えたのだし、その大変さというか厳しさというか、「トリオ」と言えばそちらの要素の方がまず頭に浮かぶのだ。
過日このトリオでリハーサルを行った。田村君と及川君は初対面。まずは感触を確かめる程度に、次々に演奏曲目をこなしてみたのだが、最初は自分の演奏する音になかなか集中できなかった。要は緊張していたんですな(笑)。ところが逆にこの緊張が良かったのかもしれない。「トリオ恐るべし」的な恐怖感のようなものをすっかり失念していた。バンドの歯車が徐々にかみ合ってくるにつれて、自分の音もよく聞こえるようになってきた。するとどうだろう。音楽の中に、自分の居場所が大きく確保されていることがよくわかってきた。もちろんその居場所のベースにあるのは及川・田村両名の作り出してくれたものなのだが、まるで目の前に自由な荒野が広がっているかのような風通しの良さを実感した。
当然のことながら、その自由な荒野で意味のある音を出すという責任は変わらない。自由な荒野を縦横無尽に動き回るには知識も経験もテクニックもいるわけで、そこに魔法はない。今はライヴが楽しみである。