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つれづれ楽曲評論#1・サーチライト/玉置浩二/2013年

独断と偏見に満ちた楽曲分析

· 楽曲分析

サーチライト 作詞:玉置浩二・須藤晃、作曲:玉置浩二、編曲:トオミヨウ
 

玉置浩二は、玉置浩二というソロシンガーよりも筆者にとってはバンド「安全地帯」のボーカルの人なのだが、もはやそんな認識でいる人は少数なのかもしれない。「サーチライト」は「東京バンドワゴン(日本テレビ/2013年10月期)」というテレビドラマのエンディングテーマに使われた楽曲で、そのドラマに玉置は出演もしていた。久しぶりに毎週見てしまったテレビドラマで、ついつい感情移入して購入してしまったシングル。

今では歌手としてよりもエキセントリックな発言・行動の有名人という感もある玉置浩二だが、この曲を聴く限り歌がうまい人だと思う。なぜならこの曲のあまり意味のない歌詞をまるで物語のように、聴き手があたかも自分の物語と錯覚させるかのように聴かせるからだ。無粋を承知で書くけれど、ラムネの瓶を泣きながら割るやつなんていないし(いたら相当あぶない精神状態だ)、名も無き雑草が枯れようが枯れまいがほとんどの人にとってどうでも良いことだ。サビで「寂しい僕の救世主たる君」みたいな歌詞世界が展開されるが、この歌詞を文字で追っても、どこにも自己投影できる要素は無い。

ラムネの瓶の 中のガラス玉
どうしても直ぐに 手に入れたくて
雨に濡れたまま
泣きながら 泣きながら 粉々に 割ったんだ Oh〜

 

怖くて 寒くて 眠れなくなって
小さな光を 探した夜に
必ず僕を照らす Oh〜
サーチライトを ずっと
信じてた 信じてた

 

けなげに咲いてる ありふれた花
枯れてもいいと思ってたのに
乾いたこの心で
ちぎっても ちぎっても どうしても 枯れなくて Oh〜

 

涙が溢れて とまらなくなって
小さな光を 探した夜に
必ず僕を照らす Oh〜
サーチライトは そうなんだ 君なんだ 君なんだ

 

怖くて 寒くて 眠れなくなって
誰かの胸を 探した夜に
必ず君を照らす Oh〜
サーチライトに 僕は なれるかな なれるかな

サーチライトを ずっと ずっと 信じてる 信じてる

この意味の希薄な、乱暴に言えば「メロディに合わせて声を出すためだけの文章」を、壮大な物語のように聴かせることができる歌い手としての玉置の力量には素直に脱帽せざるを得ない。「歌がうまい人」とは音程や譜割りを正確に表現できる人というだけではなく、歌詞世界を伝えられる人のことだ。正しいか正しくないかは問題ではなく、聴き手が「自分のために作られた歌だ」と思わせることができる人がうまい歌い手である。

歌詞にばかり注目してきたが、メロディとハーモニーもこの歌詞の物語性を助長している。玉置は「ハモり魔」らしいのだが、その資質を最大限活かすメロディだと感心してしまう。特にサビの最後の4小節、下降低音の上で地声と裏声を往復しつつハモるという合わせ技の炸裂具合は見事だ。同時にサビ出だしに置かれる反復するメロディも巧妙だ。作曲者玉置浩二はメロディ(とハーモニー)に於ける日本人の好みを知り尽くしている人でもある。

一方でサウンドの造り自体は廉い。もうこれ以上なく廉い。クレジットなどのデータが一切ないのだが、恐らく生楽器はストリングスセクションだけで、あとは全てシンセとサンプラーである。ただしアレンジが考え抜かれているので安っぽい印象はない。むしろ玉置のドラマティック過ぎる歌唱のバックはこれくらいあっさりしている方が良いのだろう。その抑制っぷりにも深慮遠謀を感じてしまう。

玉置のオレ様っぷりに心底共鳴できるなら、アルバムもライヴもたまらないものになるだろう。つまりはクセの強いチーズのようなアーティストなのだ。好きな人はとことん好きだが、ダメな人は匂いですらダメ。そんな玉置の適度に灰汁を抜いた、誰でもご賞味できます的な1曲だと言える。

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