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オレが良ければそれで良い

エフェクトをあらかじめかけてシンセサイザーを録音する理由

· 機材,音楽雑感

真夏のリワイヤリングまつりを経て、より重要度を増したMACKIE.24/8アナログミキサー。起ち上げているハードウェアシンセへのエフェクトがけにも大活躍している。

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私はそれなりの数のハードウェアシンセを所有しているが、作曲やアレンジ作業、はたまた実際の録音の際、常にそれらを使うわけではない。単純に「その音が必要なら使う」という絶対真理がもちろんあるが、例えばスピード重視だったり、まったく逆に数年に渡って試行錯誤し続けるなんて場合、またはでき上がった曲の最終決定権を自分以外の誰かが持っているような場合。つまりは作業行程の可逆性や再現性が必要な場合はプラグイン音源でフィニッシュしてしまうことが多い。

しかしつい最近着手した曲は発表できるあてがなく、同時にアレンジのエチュード的意味合いが強い。何よりも発表しない以上「オレが良ければそれで良い」世界。こういう時は敢えてハードウェアシンセで、それも普段使わない機種や音色でセッションよろしく弾きながら試行錯誤しつつとにかく録音してしまう。そうやって録音した演奏・偶然チョイスした音色が曲にぴったりハマった時の快感はなかなか言葉では言い表せない。

さて「オレが良ければそれで良い」時に私がよくトライするのが、エフェクトのかけ録りだ。さすがに空間系(リヴァーブやディレイ)は控えるが、コーラスやフェイザーなどのモジュレーション系はバンバンかけて録ってしまう。そんな時に24/8が活躍する。Alesis nanoverbとRoland SDX-330がAUXに接続しっ放しになっており、つまみを回すだけで即がけでき、結果エフェクト込みの「完成した音色」になるので、難しく考えずにとにかく弾いて録ってしまう。

ちなみにこの場合の「弾いて」はMIDIレコーディングではなく、オーディオレコーディングという意味だ。細かいミスタッチなどはあるが、この不可逆性がたまらない。いやもちろんDAWだから録音そのものを何度でもリトライはできる。しかし私程度の演奏能力ではその再現性など高が知れている。当然だが「録音しなおせる」ことと「同じ演奏を繰り返せる」ことはイコールではない。

そして同時にこうも思う。音楽(の演奏)にはある程度の不可逆性が必要なのではないか。私は「人間による演奏の力」を信じる者である。だからいくら録音テクノロジーやDAWの作曲支援手法が進化しても、演奏に命を吹き込むのは人間であり、音楽=演奏だと思っている。一期一会の演奏の積み重ねこそ一人多重録音音楽に命を与える唯一の方法であると思えて仕方ない。

たかがMACKIE.のミキサーとエフェクトかけ録りの話から大げさな話になってしまった。エフェクトかけ録りでシンセを録音するのは楽しいな。以上。